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旧煉瓦工場続・旧煉瓦工場旧煉瓦工場その3誠之堂・清風亭レンガ塀の刻印
20140629 

誠之堂と清風亭



旧煉瓦製造を見た後、時間があったので関連ついでと誠之堂と清風亭も見ることにした。


誠之堂。
国名は失念したけれど(以後、失念が多いです。ガイドさんの知識量には驚かされた)
西欧の田舎屋を基本デザインとしてしているのだそう。
右上の風見鶏には漢字で東西南北が書かれており、鶏の部分は損失のためレプリカだとかなんとか。

玄関の天井は北西ヨーロッパのハーフティンバー様式というもの。
レンガの積み方はフランス/フランドル積み。
レンガには市販品に回せなかった二級品を再利用しており、意図的に色を分散させることで風合いや色調に遊びをもたせてある。
ドア鍵にはイェール大学が清水組への製造協力をしたことを示す刻印があった。


 
玄関の写真にも奥に見えているが、化粧室のドアに施されているステンドグラス装飾。
写真では横からの撮影のために楕円になってしまっているが、実際には正円。
後述のステンドグラスと併せて、深谷市サイトの誠之堂のステンドグラスのページを見てもらうと良い。
左は鳳凰だが、おそらくは渋沢夫人を表しているので雌の凰になる。
右は龍で男性を表すので青淵翁なのだろう。
製作は日本企業だが、パールガラスの制作にはティファニーの二代目が関わっているのだそう。
化粧室とはいっても狭く、トイレのそれではなく純粋に化粧・整髪などの目的の鏡台部屋だろう。


 
 
出窓の部屋は狭いが品が良い。午後にゆっくり紅茶でも飲んでくつろぎたくなる。
このほかの場所でも思う事になるが、パンフレットやポスターがありすぎて風情が損なわれてしまっている。

この建物自体が多国籍デザインなのだが、メインの部屋はことさらに多国籍。
天井のレリーフや暖炉のレンガ積みは李氏朝鮮、窓・照明・テーブルなどは西欧諸国(個別の国名失念)、
ステンドグラスは漢の武帝だかの時代の世俗風俗を描いたものだという。
アジアとヨーロッパが入り混じっているわりにはまとまりがよく、個別に見ても全体としてみても良い。
今日見た建築物の中では一番良い場所だといえる。

テーブルは本来イギリス製だかだったそうだが、これは当時のレプリカだという。
半円部分は内側に折りたたむことができ、左右の真四角のテーブルを詰めて組み合わせることが出来る。



パール加工のガラスがとても綺麗なステンドグラス。
カメラによる色調の差もあるが、下の写真と比べると中央・左側の人物が色が変わって見えているのがわかる。
中心人物の袖や背の衝立あたりは、パール加工の波打ちがよくわかり、実際に目にすると本当に綺麗だ。
ガイドさんがガラスの意匠について解説をしてくれている間、マジマジと見入ってしまっていた。








6枚のステンドグラス。これに加えて前述の龍と凰で8枚。
偉そうな人物は皇帝ではなく、領主などの少し位が下になる人らしい。
青淵翁が子爵だったことを考慮してか、最上となる人物の意匠ではないそうな。
左には燕が飛んでいるが、これは掛詞ならぬ掛け絵画とでもいうか、多重の意味がこめられているという。
燕(鳥)がいるということで野外を表し、燕という言葉には宴席(エンの字の転換か?)という意味や
くつろぎという意味があるとのことで、外での酒宴でくつろぐ様子、という解釈ができるのだそう。
残る2枚の解説は受けなかったが、芸能や料理に関するものだと見て取れる。どちらも宴席にも通じる。
出窓の部屋とこのガラスは是非じっくりみてほしい。


 
照明と青淵翁レリーフ。
レリーフは以前には横向きのものが飾られていた。


 
暖炉。内外ともに朝鮮積みとのこと。外壁の文字(?)はいかにも。
煙突もついており体裁は整っているが、使用を目的としたものではなく形式・様式美のためのもの。
火を焚かないものだから、鳥や小動物の侵入をふせぐために塞がれている。
暖炉の上には当時物らしい論語の本が置かれていた。
ステンドグラスは当然に外からも見ることができる。


続いては清風亭。初期コンクリ造りの建物。

迎賓・会議室といった風、当時の他のそういった施設と同じような整った気品さはあるが、
装飾はわりと地味なほうだと思う。
こちらの部屋も広告的な展示物が置かれすぎていて落ち着きが損なわれているのが惜しい。
床や窓際の腰掛など多くが楢材で、ドアなどはチーク材。
設備は基本的に当時のものだが、椅子の皮やテーブルの塗装などに手直しが行われている部分もあるという。

暖炉を正面に据えて左右にシンメトリーデザインとなっている。
暖炉に向かって右奥の部屋はクロークを掛ける部屋とトイレがある。
トイレはやはり近代化改修されているが、男性トイレの仕切りに大きな硯石が贅沢につかわれており
個室トイレのほうも壁や戸がそう安くはない造りになっている。
画面外になるが、暖炉向かって左は給湯室と玄関。
本来は玄関から上がるのだが、今日は臨時で外に面した戸のほうから上がらせてもらった。
誠之堂と違って写真が少ないのはご愛敬。



清風亭から見る誠之堂。
清風亭と誠之堂は移築前も並んでいたそうで、周辺樹木も揃えて持ってきたということだから
かつての清風亭からも同じように誠之堂が見えていたのかもしれない。


清風亭内では壁際の凹凸部分にはスクラッチレンガのタイルが組み込まれている。

映り込むシャンデリアが美しい。帰り際には消灯。
照明類は蝋燭だったものを電球に代えたものかと思っていたが、当時すでに電化されていたので
はじめから蝋燭風の電灯装飾と炎を模したような楕円の電球が使われていたという。
明治〜大正期においてすでに、電気照明を蝋燭に見立てていたことに驚く。
こういうことはなんとなく現代的な回顧と安全性の妥協点の産物と思っていたが、
デザインとしてはそうでなしにとっくの昔に考えられていたのだ。

清風亭は外観すら取り損ねてしまったし、玄関を通ってもいないが、外の天気が悪かったので仕方がない。
誠之堂もベランダを見れなかったし、ガイドさんもいつもとは違う案内をしてくれたということなので
そのへんはまたそのうちにといったところだろうか。
ステンドグラスなどは是非また見ておきたい。

初見ではあったが今日のガイドさんは非常に大当たりで、ただ建物の案内をするというものではなく、
建物やその内装にまつわる横道の話がとても興味深く聞けて面白かった。
別の友人とお互いの趣味の話で点と点が結び合って線になるということがあるのだが、
テーマを掘り下げていくとその横すそも引っ張られていき、別の件と繋がって関連めいていくことを
ここでまた実感することができた。
向上心や継続することの意義なども身を持って伝えられ、けして軽くない言葉に申し訳なささえあった。
そこで青淵翁の晩年の話を例に持ち出す辺りも、状況に対する話の持っていき方として非常にうまい。
来館時点ではただ軽く施設案内を受けるだけだったつもりが、気付けば人生の案内まで受けていたようである。






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